Wednesday, September 27, 2006

大きな木

「それから、いまどき心から芸術を愛している連中の貧苦を、情け深くまぎらせてくれるのと。」
上野の森美術館でダリを見た。天気の良い月曜日。ダリは相変わらず上手く、彼の本質は遠い空のなかに寂しさをたたえてふざけ合っていた。生きると言う事やしがらみの中で、芸術家自身耐えかねる要素が沢山あるに違いない。芸術家でもない私にでさえあるのだから。
上野の森には不思議な何かがいる気がする。すこぶる天気もよく木々は冴え渡り風は心地よく。
生きる事をおやめなさいと遠くから聞こえる。働く事を止めて、じっとここにそうして座っていたらどんなに素敵な事でしょう。と、天使の様な悪魔のような声がささやきかけて来ると感じるのは私だけだろうか。沢山の人の群れの中で、私が何をしようと貴方がなにをしようと、なんら影響を及ぼさない社会で、生きる意味を見いだすのは大変な事だろう。私は逃げる。どんどん逃げる。生きる意味を探す行為さえ意味のない事に思えたら、心底思ってしまったら、それを考えると怖くて怖くて逃げる、逃げる。こんな自分でも大丈夫、何らかの意味があるはずと笑って言える世代をすぎた。ねえ、大丈夫?本当?いいの? 懐疑心が首をもたげて私を振り返る。私のような顔をして。
大きな木々が森を囲ってるせいだろうか。なんだか不動の者が全部を知ってて、人間の存在を嘲笑っている気がする。育ち過ぎた木々は本当に人間に安らぎだけを与えるのだろうか。