オオミズアオという蛾がいる。
小さい頃、図鑑でみてびっくりした。他のページに載っている蝶より断然キレイだったから。
私の図鑑にはいろいろと工夫がしてあった。なんとか百科とか、なんとか全集というようなそろい組の本を買ってもらうのがとても好きだったので、今思えば、私は小さいころから本屋さんの上顧客だったのではないだろうか。嫌いなページをホッチキスで留めたり、図鑑のタイトルを自分なりに書き換えたりした。それはさておき、その時の私は5歳かそこらだったので、どうしてオオミズアオはチョウチョの仲間ではなくて、蛾の仲間にはいったんだろう?と、ひとしきり考えた事を覚えている。
大人は何も知らないということを知っていたので、誰にも聞いたりしなかったが、結構真剣に考えた気がする。この思いに間違いがある事に気付いたのは、もっと大きくなってからだったと思う。「なんだ、そうか。自分で決めたんだ」だって、蛾より蝶の方がキレイだなんて、人間があとから決めたようなもんだし、オオミズアオにとってはそんなことどうでもいい事に違いないって。蛾はどちらかと云うと気持ち悪いとか言う人が多いので、馬鹿な私が他人の意見に惑わされてオオミズアオさんに失礼な事を考えたんだと。
小学校のクラスメートに「オオミズアオって知ってる?」って聞いたら、「なにそれ?」「蛾」「ウエー、気持ち悪い。知らない」と間髪入れず言われた事を思い出す。その子達はミタコトモナイモノを気持ち悪いと言いやがった。おっと、言った。
それも、いとも簡単に。
いろんなことを思い出すと、その時その時の対処方法で、その人の方向性が決まっていくんだなと今更ながらに思う。
チョウチョは死んだ人の肉を食べるとか、次に死にそうな人に停まったりすることもあるそうだ。
「まあ、キレイ!私にチョウチョがとまったわあ」何て言ってる人を見ると、こっそり笑う。へへへ。
オオミズアオは、今でもわたしのあこがれのオオミズアオだ。
むしろ蛾の方がかっこいい。ステルス戦闘機みたい。
